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005:黄昏

古びた街に残るそれは、まるで止まった時のよう。凍結された時間は失くしたパズルの一片のように戻るべき時を持たない。例えば何かの図集で紹介されていた工業建築のように、例えば失われた巨大文明の一端のように・・・。

多くの人にとって意味を持たなくても、記号としての意味は見出すことはできる。
そこに何を見出すかは貴方の人生の記憶のドライブに拠るに違いない。ただ寂れてしまったがために、憎みさえもこめられないために残っているものもある。それが案外廃墟なのかもしれない。無関心はその副産物として時を止めてしまうのかもしれない。



004:at Willy's

改札で別れた後突然のメール、
君が電車を降りる頃僕と君のラインはもうつながらない。

電話が鳴っているのを知りながら僕は出ない。
それは君の迷いに対するささやかな僕なりの罰。

苦い酒を乾し、自分の心に再び鍵をかける。

明け方重い足と心を引きずって家路に着く。

0032003.10.04 08:41:55

改札を降りて、中央通に出る時、もしくは御茶ノ水から高架に沿ってこの街に出る度に、街の変化に驚きを覚える。
前に来た場所に同じ店がない。大看板の女優やキャラクター達が映像をコマ送りで見るように今日も彼女達の違う1コマを待ちへ向けて発信している。

数年前に比べれば確実に外国人が増えているし、ここ数ヶ月のスパンで見れば千代田区のマナー条例が施行されてからは喫煙者がたたずむ場所を必要としてか飲食店が激増している。この街では考えられなかったことだ。

ためしに写真を撮ってみたらいい。人の変化よりも建物の包装のほうが変化に富んでいることを確認できるだろうから。 スキンだけが超高速で変化していく街。本質的なものなどありはしないなどと達観できるまでにはまだまだ時間がかかりそうだ。
時間と空間のズレというか違和感を確実に感じる。


002:過去ログより

後輩の一人と別れ、僕らはしばらく寒い夜の街を歩いた。
そしていつものように、いつもの店の、いつもの席についた。

アルコールのせいかなんだか僕の知らないうちに
もう一人の僕がしゃべりだしているような感じで・・・。
もう一人の僕はグラスを傾けてみたり、ナイフにゆびを絡ませてみたり、
壁に映されている60年代の映画に目をやったりしていた。

今となってはその店を出たのは覚えているのだが、そこからどうやって帰ったのだか記憶がない。
隣にはよく知っている彼女がどこかの女と話していたような気がした。名前も思い出せない僕は仮に彼女をクミコと名づけることにした。
クミコは隣で饒舌に話す僕の姿に、気がついていないようだった。
まるで僕はクウキのなかにぬりこめられてしまったかのように、
自分の存在が希薄なものになっていくのを感じた。

目が覚めるとそこはいつもどおりの僕の部屋だった。
僕はテレビのスイッチを切るのを忘れてすっかり眠り込んでしまっていたのだった。
体がしびれ、頭が痛んだ。
海の向こうでは戦争が始まっていた。
テレビはどこかの国の大統領の言葉を
なんどもなんども繰り返していた。


001:本福寺

地下へと続く階段を下りていく。
ヴィン・・・・・ヴィン・・・・・ヴィン・・・・・・・。
足元から流れる音は何か金属的だ。でも不思議と懐かしい音だ。
子供の頃を思い出してみたらいい。団地の中を仲間と駆け回った時・・・・、壁当てをして一人遊んだ時・・・・。そんな記憶を呼び起こす音。それは確かにnaturalな音ではない、でも確実に自分の記憶の中にあ る音。
六甲の集合住宅にも夢舞台にも彼の建築にはそれはある。


夕方日の沈む頃そこはとりたてて美しくなる。本尊をぐるりと取り囲む回廊を回っていく。果てに光を浴びることになる。拝観時間内にそういった体験をしたいなら秋口から冬にかけてがベストだろう。

冬の長い光が赤いフィルターを通して貴方の体を包むだろうから。



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